パン屋がホームページを活用したら・4

4・横文字とパン屋

「つまり、月々1万円以上はかからないということですか?」
「はい、消費税込みで1万円です。やはりビジネスとして使うためにはそれなりの環境や継続的なメンテナンスが必要なので、家賃のようなものですね。弊社の場合、最低契約期間の5年間は金額が変わらず、消費税が上がっても1万円です」

お得なんだね、ショップカードもカワイイね、というつぶやきが耳に入る。
ハルノリはパンフレットのページをめくり、金額と項目の書かれた表を指さした。

「この初期費用10万円で、できるのはここまでということですよね?」

そこには、初期費用の対応範囲と、契約のおまけとして店舗に置けるショップカードは100枚まで無料、別途費用としてオリジナルデザインやカスタマイズに対応という記述がある。

「はい。デザインはビジネス用のテンプレートから選んでいただきますが、色はご自由に設定できます。アメブロの設定はこちらで行ないますので、マニュアルに沿ってお好きなデザインを選んでいただければ、すぐにお使いいただけます。弊社では初期設定のみ行ないますので、アバターの設定やそれ以外のサービスはご自由にしていただいて結構です。オリジナルデザインやカスタマイズは別途お見積りにて対応させていただきますが、お客様の半数以上はファーストプランでご満足いただいております」

流れるような説明に、妻はパンフレットを持ったまま固まっている。
書いてあることを要約されて説明されたのはわかったが、ハルノリも理解できたのは半分くらいだ。

「ある程度の自由度があるということですよね?」
「はい、難しいところはすべて弊社で設定いたします。ファーストプランは “自由かつ簡単に” がコンセプトですので、装飾などはお客様の好みで決めていただけます」

パンフレットに掲載されている事例のほとんどが、そのファーストプランで作られたものということだった。まあ、悪い内容ではないのだろう。

「FacebookとTwitterの連携もできますが、アカウントをお持ちでないようでしたら、そちらも設定いたしますよ。初回の写真撮影も初期費用に含まれており、店舗に伺って弊社のスタッフが撮影します。5枚までホームページに使うことができますので、トップページに1枚と、下層ページで4枚ご利用いただけるようになっています」
「はぁ」

ムツミは絵や文字の並ぶ大きな厚紙を一生懸命に眺めていて、夫の間抜けな相づちに気づかない。
彼らの言葉を待たないうちに、スーツの男はもったいぶるように、やや声を潜めながら続けた。

「実は、来月からキャンペーンを行なう予定があるのですが……このように、貴重なお時間を割いてご説明させていただき、この場でご契約いただいている店舗様には、シークレットのキャンペーンを行なっております」

資料はないが、来月からは5%引き、今月中なら10%引きだという。
つまり、1万円の割引だ。どのみち契約するとなれば、無視できない金額である。

「……つまり、おたくにお願いするとどうなるんでしょうか?」

ムツミがパンフレットから目を離しておずおずと尋ねるが、言葉からはこの場で契約してもいいという意向が含まれている。ハルノリも、回答によっては同じ思いだ。

「春日様ご夫妻がしっかりとホームページを管理できるようになるので、お客様に、パン・ド・ムー様の良さを伝えられるようになります。そして新規のお客様に興味を持っていただければ、売上アップにつながりますよ。弊社が全力でサポートさせていただきます」

若い男性は笑顔を崩さず、よく通る声ではっきりと言い切った。

次:パン屋がホームページを活用したら(5・忙しいパン屋)

※この物語はフィクションであり、実在する企業名、団体名、地名、および人名等とは一切関係ありません。

ウェブの心理戦略家。WordPressの勉強会(WordBench新潟・長岡藩)も主催。顧客の心理と分析を裏付けるデータを元に、心理学に基づいたライティングとWordPressでのサイト構築が得意。新潟県長岡市在住。2013年4月には新潟県で初のウェブ解析士マスターになり、同年6月よりコスギスとして活動。夫と子ども2人をこよなく愛す。おやつはプリン。

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