はい、ごめんください。コンセプトダイアグラムが好きなコスギです。
時々ブログにも書いていますが、提唱者の清水誠さんの人柄や考え方も好きです。大好きです。
好きすぎて「戦略といえばコンセプトダイアグラム」脳となった私が色々とこねくり回していたところ、清水さんからお墨付きをもらったので、先日、書き方講座のメイン講師をやらせていただくことになりました。講師として関わった視点から、書き方のコツや、これから盛り込んでいきたい点をまとめてみました。
すでにコンセプトダイアグラムという言葉が何度も出てきているので、そろそろゲシュタルト崩壊を起こす頃かと思いますが、コンセプトダイ「ヤ」グラムではなく、コンセプトダイ「ア」グラムということだけは、先にお伝えしておきます。間違えたら焼きプリンの刑。
コンセプトダイアグラムは「コミュニケーション戦略マップ」
コンセプトダイアグラムの定義は、以下のとおりです。
コンセプトダイアグラムとは:
企業が望む顧客の変化(態度・行動・ロイヤルティの変化)を二軸でモデル化する図解手法
少し長いので、一言ずつ考えてみましょう。
「企業が望む顧客の変化」?
コンセプトダイアグラムは大前提として、「企業が望むようにお客さんを変えたいよね!」という欲求に基づいています。これは「お客さんに合わせて企業を変えていかなきゃね!」という考え方とは、似て非なるものです。
考え方としては企業の立場から始めて良いので、企業規模を問わず、導入のハードルは非常に低いものなんです。
しかし、今悩んでいる企業の多くは
- 事業の対象とする顧客はどんな人なのか?
- どんなふうに顧客を変えていきたいのか?
という観点が抜け落ちているか旧時代的になっているので、うまくいかないことが多いようです。
「態度・行動・ロイヤルティの変化」?
成約までの一般的なフローをざっくり3つのステップにわけると、
集客 → 育客 → 接客
です。認知させ、興味を深め、背中を押す、という流れですね。「へ〜」→「良さそう」→「買う!」といった具合に、顧客の心理や態度が変わります。
たった3つのステップでは一般的で考えにくいので、企業の実態に合ったステップごとに、「起こしたい態度や行動、ロイヤルティの変化」を考えていくわけです。
「二軸でモデル化」?
コンセプトダイアグラムは、2つの軸で考えるという特徴があります。
1つだけの軸では「成熟度」などの汎用的な言葉になってしまいかねません。その「成熟度」を具体的に考えたとしても、企業都合に偏ってしまいがちになることから、企業が望むゴールを実現するための2つの要素を軸として考えるカタチになりました。つまり片方だけが深まっても、企業として望むゴールにはなりません。
個人的には、この2軸の考え方は「受動的/能動的」な行動の分岐として落ち着くのではないかと思っているのですが、軸の性質にもよるのでもう少し深めたいところです。
「企業と顧客のコミュニケーション」を表したもの
というわけで、
- 企業が望むように顧客を変えるためのフローを考えよう
- そのフローをきちんと流すために必要なコミュニケーションは何かを考えよう
という2つが盛り込まれているので、「コミュニケーション戦略マップ」と言えるのです。
コンセプトダイアグラムは、
ゴール → スタート → 軸 → ステップ → 施策 → KPI
と考えて落とし込んでいくのですが、このステップまでが戦略に当たります。
よく「ステップが施策になりがち問題」が起きるのですが、これを回避するためには「戦略の失敗は戦術で補うことができない」という言葉を思い出してください。施策やKPIは、戦略から落とし込むことが必要なのです。
今回の講座ではむしろ「軸の設定が難しい」という声が大きかったのですが、ゴールとスタートの解釈にブレがあると難しくなるのではないかと感じています。というのも、そもそも「企業の立場から視点を変えずに、顧客の立場に移動する」ということを意識できていないと、ゴールとスタートがブレるのです。これは後述しますね。
ということで、コンセプトダイアグラムは納得感のあるコンテンツの設計に役立ち、仮説と検証を前提としたコミュニケーションができる、素ん晴らしいメソッドなのです。
\ レッツ コンセプトダイアグラム!/
実は顧客よりも事業の本質的な理解が大切
コンセプトダイアグラムは「企業と顧客のコミュニケーション戦略マップ」ですが、主語は顧客で描かれます。ですから顧客の理解が必要と思われがちですが、実は事業(自社)の理解が何よりも重要です。
「なぜ、この事業がはじまったのか」
「この事業で、どんな世界を実現したいのか」
この2つ、つまり、ミッションとビジョンを共有できていないと、コンセプトダイアグラムは描けません。「コンセプト」の見える化なので、当然といえば当然です。
そういう意味では、「他社がやってるから」「流行りだから」という主体性のないミッションや、「お金を稼げそうだから」という手段が目的化した事業にコンセプトダイアグラムは合いません。
製品やサービスを使ってもらうことがゴールなのではなく、それによってどんな幸せな世界を描くのかを考えるのは理想論かもしれません。しかしいつの時代も求められるのは、志を持ち続けた企業なのではないでしょうか。
とってもホワイトなメソッドなので、グレーな内情をえぐられることは少なくありません。真摯に事業に向き合い、ブラックボックスがなくなっていくことが楽しいと感じるようなら、きっとうまくいくことでしょう。洗濯洗剤もびっくりの、驚きの白さを体感してください。
理想的なコンセプトダイアグラムとは
事業の理解が何よりも大事というコンセプトダイアグラムは、外注して作ってもらうものではありません。経営者を含めた関係者全員で認識を共有し、納得解を作り上げるものです。
ですから講座では、以下のように定義しました。
理想的なコンセプトダイアグラムとは:
活発なコミュニケーションと気づきによって、全員が納得して行動の指針となるもの
このようなダイアグラムをつくるための進行役を「ファシリテーター」といいます。活発なコミュニケーションを促し、気づきを生み出し、納得して行動できるようにする(ファシリテーションする)役目を担います。
リーダーは「明確に共有できている目標に対して先導」しますが、ファシリテーターは「場のコミュニケーションによって目標を明確化」します。つまり、絶対解ではなく納得解を出せるようにする必要があります。
とはいえ、闇雲に進んでも意味がないため、「コンセプトダイアグラムを描くことによって、どのような行動の指針にしたいのか」という目的を共有したうえで進める必要があります。
情報の整理をしたいということであれば「サイトを含めたビジネスの確認と、そこから得られる気づきを共有する」程度かもしれませんが、コンセプトダイアグラムの先にリニューアルを目的としているなら、データドリブンなサイト設計のためにも最後のKPIまで落とし込む必要があります。
なお、リニューアルなどの手段を想定していると、途中で施策のアイディアに盛り上がってしまうため、ファシリテーターは場を活性化させつつ、目的達成に向かって固めていきましょう。
コンセプトダイアグラムをやってみたい!と思ったら
さあさあ楽しいコンセプトダイアグラム。やってみたいですよね!
コンセプトダイアグラムを知っている人も知らない人も、いくつかの方法があります。
①自社で講習をおこなう
企業・事業者向けに、コスギがファシリテーターとして、実際の事業に関係する方々を集めてワークショップを行う方法です。
- コンセプトダイアグラムに興味を持った
- サイトリニューアルなどの戦略転換のタイミングを迎えている
- 顧客視点で現状を打破したい
という方に最適です。
事前にヒアリングシートを記入していただいたうえで、約5〜6時間のワークショップを行い、コンセプトダイアグラムを描いていきます。
企業や事業の規模は問いませんが、事業規模が大きい場合は多くのニーズが存在することが少なくありません。スタートとゴールが同じなら良いのですが、異なる場合は1枚のダイアグラムに表すことが難しいこともありますので、優先順位を決めて進めていきます。
目的に応じてよりよい方法をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。コスギが出張する場合は、交通費+税抜き5万円から(2018年7月現在)承っておりますので、新潟県外でも飛んでいきます(/・ω・)/
なお、清水さんにお願いしたいという場合は、カスタマーアナリティクスを前提とした継続的な改善まで見込みますので、清水さんに相談してみてくださいね。
②セミナーを受講する
「クライアントにコンセプトダイアグラムで提案したい」という方向けに、「描き方」のセミナーを受講する方法です。
一般社団法人ウェブ解析士協会の認定する「上級ウェブ解析士」のカリキュラムである「クライアントの事業を把握するノウハウ」を持っているからという理由で資格グレードに制約がありますが、時々開催されるウェブ解析士協会のエキスパート講座に参加することができます。
この講座の定価は、3.9万円/人(2018年7月現在)で、定員は12名程度です。
とはいえ、ウェブ解析士の資格を持っていなくても、普段からコンサルティングをされている方や、コーチングやファシリテーションをしている方も参加したいですよね!
③地域で主催する
「コンセプトダイアグラムを描きたいけど東京まで行くのはちょっと……」という方は、ご自身で主催しちゃってください!提唱者の清水さんを講師として呼ぶことも、コスギを呼ぶこともできます。
どうせなら清水さんを呼びたい、という場合は、
- 何度かコンセプトダイアグラムを描いたことがある
- 普段から解析を前提としたコンサルティングを行っている
- カスタマーアナリティクスを実践したい
という条件に合う方がオススメです。コツが掴めないままだと「難しかった……!!」という感想で終わってしまいかねません。
コスギを呼びたい、という場合は、
- コンセプトダイアグラムが好き
- コンセプトダイアグラムをカジュアルに楽しみたい
- 清水さんの講座を受ける前にある程度描けるようになっておきたい
という条件に合う方がオススメです。
とはいえ、「描き方講座」は要するに「ファシリテーター養成講座」になるので、コンセプトダイアグラムをある程度描いた経験のある方でないと難しく感じることは確かです。
ウェブ解析士の資格をお持ちなら、主催の際には協会が販促をしてくれますが、主催も販促もすべて行い、参加者が12名程度見込めるようなら講習可能です。
④オンラインの勉強会を主催する
コンセプトダイアグラムの描き方を学んだら、zoom などをつかってオンライン勉強会を主催してみてはいかがでしょうか。時間が合えば、コスギがオブザーバーとして参加いたします。2018年7月現在、1時間程度なら費用は不要です。
- コンセプトダイアグラムの描き方講座に参加した
- コンセプトダイアグラムをもっと描けるようになりたい
- ワークショップの進行役をやっておきたい
という方は、コンセプトダイアグラムの対象案件と参加者数名を集めて開催してみてください。だいたい、21時すぎなら参加できますので、ぜひお声がけください。
最後に
コンセプトダイアグラムのメソッドはとてもオモシロイのですが、いかんせん、個々のスキルに依るところがまだあるなあと感じています。
エバンジェリストを自称する私としては「どうすれば考えやすくなるか」を考えるようにしていて、「清水さんだからできる」というものではありませんが「メタ思考ができればできる」ものだなあとは感じていて。
理想的なダイアグラムを作るために必要な考えのステップを紐解くことができれば、ダイアグラムができあがるまでの時間は伸びても「腑に落ちる」ものになるだろうと。作成することそのものが目的ではなく、全員が納得できる行動指針を作り上げるのが目的なのですから。
コンセプトダイアグラムを活用するにあたり、一番高いハードルは思考の切り替えなのですが、バイアスを意識する、つまり自分の思考の偏りを矯正するのが難しいところです。難しいと感じる方はなおさら、経験を積まないと慣れません。
小川さんのやり方のように、一旦ビジネスフローを洗い出してからやるのが一番わかりやすいのかなあと思いつつも、私自身が企業にとって都合のいい顧客視点(=企業の立場から動けていない)になってしまったので、同じような罠に陥らないための対策を立てておかないとな、などと考えたりしています。
というわけで、コンセプトダイアグラムを語れる仲間を増やしたいというのが私の希望なので、やりたい!という方はぜひお声がけくださいね。
以下、コンセプトダイアグラムの作成はもちろん、視野を広げるためにおすすめの本を紹介しておきます。