はい、ごめんください。
アウトドアは好きなのに、日光アレルギーの小杉です。夜はいいね!
先日、Web解析の第一人者である 清水 誠 さんが提唱する、戦略立案のコミュニケーションツール「コンセプトダイアグラム」をみっちり学ぶためのセミナーキャンプに参加しました。キレイな写真は新潟のウェブ解析士マスター仲間の渡辺さんからいただきました。ありがとうございます!
夜は、スノーピークさんでキャンプ&BBQ!そして焚き火!!サイコーでした!
そんな有料セミナーの内容をかなり公開していますが、「コンセプトダイアグラム」はやらないとわからないという性質があります。(※清水さんに確認していただき、公開許可をいただいています)
私自身、手を動かさずにわかった気になっているのが一番危ないという危機感を感じたので、この記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひ一緒にワクワクワークしましょう(/・ω・)/
コンセプトダイアグラムの本質
「コンセプトダイアグラム」は過去を振り返るものではなく、未来を具体的に考えます。経営者や現場など、コンセプトダイアグラムで得られる成果物はビジネスの戦略図です。
顧客を絞りこむ必要がない(ペルソナが不要)ので、比較的抵抗なく扱えるのではないでしょうか。
相手が購入して、リピートして、企業理念が伝わるまでのステップが具体的になれば、
「うちは広報しているようで、全然していなかったんだなあ・・・」
「うちはこのステップが抜けてたのか・・・」
という気づきを得ることができたり、
「この時はこういう戦術が役に立ちそう!」
「あの顧客は今この状態だから、このアプローチで行けばいいんだ!」
というように、スタッフからもアイディアが出やすくなります。
たとえば、
「SNSって炎上しそうだから怖いんだよね」
「ブログって書いたほうがいいの?」
「伝えたい事が多すぎてまとまらない!」
という恐れや迷いを感じていたら、コンセプトダイアグラムを作ることで、ひとつひとつ解決できるようになります。
このように戦略図として優秀なコンセプトダイアグラムですが、その本質は関係者全員が具体的な将来像を共有するための「コミュニケーションツール」です。
あくまでも、道具です。図の完成を目的とするものではありません。ブレストツールに近いですね。
包丁のように、飾るためのモノではなく、使うためのモノです。作ったものは検証して使い倒し、どんどん変えていくことを楽しみましょう。
少なくとも今回の参加で、お化粧前提のコンセプトダイアグラムは、作っても機能しないと腑に落ちたのは大きかったです。読める程度に汚いくらいがちょうどいい(笑)
コンセプトダイアグラム の描き方
はじめに、クライアント(役)が理念と対象ニーズを説明します。コンセプトダイアグラムは、自社視点(主観)で考え、顧客視点(客観)で表すのが基本なので、最初は主観的な情報共有が必要です。
最初から参加者全員が顔を突き合わせて、あーでもないこーでもないと1つのものを作るよりは、まずは各自で考えたほうが広がりやすく、良いものになります。
それを3〜4人のグループでまとめ、最後にひとつにまとめるという流れですね。
まとめる際には、批判はしません。お互いの意図の中から共通点を発見し、より自然な流れをつくっていきます。齟齬が出た場合には、理念と対象ニーズに照らし合わせて、優先したい方を選びます。
図としては、左上から右下に流れるように描きます。
もしかしたら
「流れを右肩上がりにしたほうが、上昇志向でいいんじゃない?」
と思われるかもしれません。
コンセプトダイアグラムのイメージは「落とし込み」です(ファネルの考え方)。「広がる」「伸びる」イメージよりも「磨く」イメージに近いですね。視線は左上から右下に移動するので、理解しやすいというメリットもあります。
さらに
「作った図を清書して共有する際には、上昇志向のほうがいいんじゃない?」
と思われるかもしれません。
これに関しては先程の「あくまでも使うための道具」に通じますが、共有する際に作り直すのはオススメできません。さすがに、まとめる時にはみんなが読める字に清書するくらいはしておいたほうがいいですが。
といっても、カタチにこだわりすぎるのは本末転倒ですから、作りやすくわかりやすい向きで描けば良いと思います(笑)
「こうでなくてはいけない」という制限はありませんが、まずは守破離の「守」を大切にしてみませんか?
コンセプトダイアグラム の作成レシピ(前半)
前半(1〜4)までなら、比較的短時間(最初でも2時間くらい)で作ることができます。肯定前提のブレストのようなものなので、調整はしても、否定や揚げ足取りは不要です。
後半(5〜8)はある程度専門的な知識(Web制作、経営、Web解析など)が必要になるので、コンセプトダイアグラムの作成には、最初から関係者が集まることが条件になります。
では、順を追って見ていきましょう。
用意するもの
- 紙(A4用紙をたっぷり)
- ペン(太い方が大きく書ける)
- 関係者(経営幹部から現場代表者まで、MAX8人くらい)
1. 理念を具現化した状態をゴールに配置
理念の具現化は、以下のブランディングに関する記事をご覧いただくと、考えやすくなります。
参考:ブランディングの奥義を学べるセミナー参加レポート – コスギス
ブランドが確立した状態を主観的なゴールとし、相手視点に置き換えた具体的な状態を客観的なゴールにします。
客観的なゴールを達成する「相手」は、顧客とは限りません。時には、社員視点が必要になることもあり得るでしょう。
ゴールは理念を裏返したものにすると思考が広がりますが、慣れないうちは中間ゴールを設定しても良いでしょう。ビフォー・アフターの「アフター」として考えてください。
私は顧客の言葉で表すことが多いですが、本当は、キャッチコピーくらい単純化された状態が望ましいです。
2. 対極にある状態をスタートに配置
次に、ゴールとは対極にある状態をスタートに配置します。ビフォー・アフターの「ビフォー」として考えてください。
カスタマージャーニーマップとの違いは、ペルソナを作らなくても良いところ。主観的に考えてOKです。
競合や市場、自社の強みや弱みを把握したうえで、「ここを狙おう!」と定めてスタートに配置するといいですね(3CやSWOTと合わせて考えると狙いをつけやすいです)。
このスタートをどのように設定するかは結構重要で、「ゴールからどこまで遡るのか?」がキモです。
スタートを遡りすぎると、ゴールが遥か遠くに思えることがありますが、理念からなるゴールなら変える必要はないでしょう。ステップは増えますが、目先のゴールを目指すより効果的です。
3. 「深まっていく気持ちの変化」を2つ選んで軸にする
コンセプトダイアグラムは、「気持ちが変わる → 態度変容が起きる → 行動が促される」という流れが明確になる図です。これを、2つの軸で広げていきます。
まずは、ゴールに到達するために必要な「気持ち」を考えてみましょう。いくつか挙げた中から選ぶと考えやすいです。むしろ、「気持ち」をどれだけ想像できるかで、難易度が変わってきますので、がんばってください。
どうしても「気持ち」を考えるのが難しければ、軸の1つは購入や投資、行動範囲や接触時間などの「行動」や「状態」などの定量的な指標でもいいですね。ざっくり考えてみましょう。あくまでも切り口なので、正解はありません。
また、軸となる項目同士が近いと思考が狭くなり、遠いと思考が広がりやすくなります。次の「気持ちの変化ステップ」がまっすぐ斜めに流れる場合は、思考が狭まっている証拠です。
あまり気づきが得られないなと思ったら、ステップが分岐したり、戻ったりする軸を選び直してみましょう。
4. 「起こしたい気持ちの変化」をステップにする
ゴールとスタート、軸が決まったので、次は気持ちの変化をピックアップしてステップにします。
注意したいのは、起こしたい「行動」ではなく、起こしたい「気持ち」です。行動の変化が目立つ場合は、想定される手順になっている場合がほとんどなので、新しい気づきが得にくいのです。
起こしたい「状態」はセーフですが、心理学的にも、ヒトは気持ちが動くと行動や状態につながるので、やはり「気持ち」を考えるのがオススメかなと。
誰が見ても納得できる自然なストーリーで、具体化されているといいですね。
ここまでで、コンセプトがかなり見える化された状態になっているでしょうか?
ひとまず、前半戦終了です。
1日目のセミナーが終わってからは、お楽しみのBBQ!キャンプ!
ちなみに、セミナーキャンプでご後援をいただいた、サンクトガーレンさんのエールビール、スイートバニラスタウト。ビールが苦手な私ですが、こっちのほうが好き・・・!
クラフトビールって、ワインとかスペシャルティコーヒーに似てると思いました。
また、スマイルファームの安達さんがメインでつくってくれた BBQ ごはんが、ホテルの食事かと思うようなメニューですごかったです。あまりに美味しすぎて、写真撮るの忘れました・・・。朝からトマトリゾット食べられるとか・・・!
前半終了後のコスギスのコンセプトダイアグラム
コンセプトダイアグラムは自分のビジネスの戦略図なので、お客様の目に触れるような環境に公開するものではありませんが、コスギスのサービスのひとつでしかないことと、まだまだ荒削りなので公開します。
今回の場合、主戦場はWeb、かつ、ある程度リテラシーのある方の「ネットで売りたいのに売れない・・・」という悩みを対象にしています。SNSを使っていて、ブログやホームページを持っていて、発信=Information だと思っている方ですね。
ここまでペルソナに近くなくても良いですが、コスギスのように顧客層が狭い個人事業主さんは、尖らせたほうが考えやすいですよ。
コスギスの場合、ゴールは顧客の価値観が変わった状態を想定しているので、その変化を入れたいと思い「新しい価値観の実感」を入れてみました。
位置が若干違うかも・・・と思うところはありますが、まずは初稿ということで。
コンセプトダイアグラム の作成レシピ(後半)
後半は、相手の気持ちを検証するためのデータは何かを考えたり、データを取得するための実装方法を検討します。そのため、1〜5は経営者も参加したほうが、あとからツッコミが入りません(笑)
5. 次ステップ到達の判断基準となる指標を決める
前半で作ったステップごとに、次のステップへ進んだと判断できる指標を挙げていきます。
指標というのは、データのことです。「アクセス数」などの定量データ(数字として得られるデータ)が望ましいですが、「印象」などの定性データ(数字としては得られないデータ)が必要になる場合もあるでしょう。(定性データを判断できる定量データまで落とし込めると更に良し)
指標は、Google アナリティクス で得られる指標だけに縛られる必要はありません。
「ページの後半までスクロール かつ 滞在時間3秒以上(=オファーコンテンツを読んでいる)」なども考えられます。
相手の行動から、指標を考えるのがポイントです。
6. 判断基準を取得するための実装方法を検討する
5で判断基準となる指標を決めたら、それを取得するための実装方法を決めましょう。
Web の場合は、Google アナリティクスの一般的な機能で実装できなくても、javascript とタグマネージャーで実装できる場合も多いです。
セミナーでは Adobe アナリティクスが紹介されていましたが、カスタムイベントを簡単に取得できる機能がそろっていて感動しました。敷居が高いだけのことはある・・・!
Web に限らず、アナログでも取得できることだってあります。アンケートとか。直接聞いてみるとか。
むつかしく考えても長続きしないので、「今あるリソースで対応できるのはどこまでか」「新たに必要なリソースは何か」を切り分けることも大事。
無茶な実装方法になってしまう場合は、5で判断基準を見直してみましょう。
どうしてもわからなければ、検証を前提とした設計ができる専門家に相談するといいですよ。そう、ウェブ解析士とかね。
7. 施策とメッセージを矢印に追加する
5で挙げた指標を上げたり下げたりするための施策を、ステップをつなぐ矢印に書き連ねましょう。今おこなっている施策の棚卸しにもなります。
施策を考え始めると
「この気持ちと、この気持ちとでは、記事のカテゴリを分けたほうがいい!」
「ここのステップは、ネットよりも電話のほうがいいんじゃない?」
「うちの Facebook 運用じゃ、ここのステップにしか効果ないのか・・・」
「ここを狙っていて正解だったけど、次の段階が抜けてるんだな」
などなど、現状を振り返ることができます。
コンセプトダイアグラムでいちばん気づきが得られるタイミングなので、かなり楽しいですよ。
暴走しがちな施策のピックアップですが、しっかりと優先順位を決めておこなっていくことが大切です。
負担が少なく、効果が出やすく、リスクも少ない施策から手をつけるのがオススメです。
ここまでで、ひととおりのコンセプトダイアグラムが完成です。
できたコンセプトダイアグラムは、以下の3つの視点で振り返ってみましょう。
- 徹底的に、相手の視点になれたか?
(相手の視点と自社の視点は、表裏一体です) - ビジネス全体を俯瞰して整理できたか?
(ウェブの役割や、施策のつながりや役割を明確に) - 描きながら議論が広がり、まとまったか?
(同じ方向を見つつ、芋づる式に広がっていけるのが理想)
8. データを検証して改善を繰り返す
素晴らしい包丁を買っても、それを使わなければ意味がありませんよね。
コンセプトダイアグラムを作っただけでは、仮説を立てただけでしかありません。作ってからがスタートです。
施策を実施 → 検証 → 分析 → コンテンツ(とコンセプトダイアグラム)の改善 という流れが必要です。コンテンツはもちろんですが、コンセプトダイアグラムもどんどん改善していって良いのです。
セミナーの2日目には、データのビジュアライズについても触れました。このあたりは清水さんの本に書かれている内容ともかぶるので、ぜひ読んでみてください。
コンセプトダイアグラムの2冊目は、そのうちらしいです。そのうち。
後半終了後のコスギスのコンセプトダイアグラム
・・・施策の置き場とか流れとかかなり無視してますが・・・。
個人的には離脱ポイントを見極めておくことと、検証の必要性を再確認できました。あとはやっぱり、ブログとSNSの連携は(うちにとっては)必須だなと。きっと、やればやっただけの成果が出る。それは、ウェブ解析士のコンテンツの恩恵を振り返ればよくわかります。
こうやって図に表すとなおさら、売上って結果でしかないんだなって、身にしみますね。
自社のコンセプトダイアグラム、育てていきます。
まとめ
- コンセプトダイアグラムは、理念を実現化するためのコミュニケーションツール。
お化粧前提のコンセプトダイアグラムは、作っても機能しない。 - 自社視点(主観)で考え、顧客視点(客観)で表す。
- ゴールは理念、スタートはターゲットセグメントを考えるのがオススメ。
- 「気持ちが変わる → 態度変容が起きる → 行動が促される」という流れを意識する。
- データは顧客視点でまとめよう。デジタルでデータを取得すると便利。
- 使って育てるコンセプトダイアグラムをつくろう。
ビジネスは、もっとミクロになっていく
清水さんの話では、アメリカはすでにユーザーの細かい嗜好に適応するようになりはじめているとのことでした。日本は同調の文化なので「みんなと一緒がいい」という思いが強いですが、「自分は自分」を探し始めている印象なので、近いうちにアメリカと同様、「自分」を獲得して成長したユーザーの細かいニーズに対応するサービスが今以上に求められるでしょう。
それは別に、小難しい話ではありません。なにしろ今はまだ、どのように成長したらいいのか迷っています。迷っているから、「みんなと一緒でいいか」という安全を選択しているだけです。
それなら「こういう成長ができますよ」と、エスコートしてあげればいい。お客様を成長させる体験をデザインすればいい。
つながるのはそう、ブランディング。
どのように成長させるかは企業理念に基づきますし、成長した姿はコンセプトダイアグラムのゴールに位置します。
コンセプトダイアグラムは、ブランディングを具現化できるツールなのです。
だからコスギスは、ブランディングツールとしてのコンセプトダイアグラムを広めていきたい。自分でも使っていきたい。
3年目の最後にコンセプトダイアグラムとブランディングのセミナーを受けて、そう決意しました。
一般的なご相談でもコンセプトダイアグラムを使っていることは多いので、いつでもご相談ください。