はい、ごめんください。
4年目を迎えて、ウェブコンサルタントから “価値の心理戦略家” になりました、コスギです。
新潟県長岡市には「みんな大学」という、「遊びで学び、学びで遊ぶ」というコンセプトの、”エデュテイメント” サークルがあります。
この「みんな大学@越後長岡」の Facebook ページが1,000いいね!を獲得した記念講演ということで、みんな大学発起人の小出さんによるお話を聞いてきました。
今回の内容は大学での講義を凝縮したエッセンスということで、学生さんたちのフィードバックも盛り込まれていて、非常に面白かったです。みんな大学のマナビ成分が増えてウレシイ今日このごろ。
ということで、個人的な感想を混ぜ合わせたまとめレポートです。「ブランド」という文字がゲシュタルト崩壊しかけたら、太字のところだけ流し読みしてみてください。
なお、本セミナーは YouTube に公開されるそうなので、公開され次第更新しますね。
6月5日 追記:フルバージョンで公開されました!
→ みんな大学1000いいね! 記念『ブランドの奥義』(2016年05月30日) – YouTube
“ブランド” ってなんだろう
「ブランド」って、何だと思いますか?
色々な定義があるかと思いますが、せっかくなのでちょっと考えてみてください。
あなたの考える「ブランド」って、なんですか?
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・・・はい、何も考えずにここまですっ飛ばす方がほとんどだと思いますが(笑)、考えてみた方は SNS でシェアついでに、「最初は◯◯だと考えてみた」って教えてください。こういうのは間違えたほうがオモシロイんです。
ちなみに、私は「体験」だなと思いました。
学生の中でも色々な意見が出て、先人たちがたくさんの定義をしていますが、最終的に一言で表すと「(固有の)名前(識別子:アイデンティファイア)」ということに落ち着いたとのこと。
つまり、ブランドとは「自分の名前で商売する」or「名前を背負って商売する」ことと言えます。
ブランド=名前と考えると、さまざまな可能性が生まれます。
ブランドの可能性を自由にして、生かしていくには?ということで、次へ。
ブランドの「奥義」ってなんだろう
ブランド=名前。
これだけシンプルになると、使い方がわかりませんよね。
セミナーでは、ブランドの奥義とは、ブランドの名前を「どこにつけるか?」を問いなおすことと結論づけていました。
「問いなおす」という言葉を使っているところから、まったく新しい何かを創りだすよりも、今ある自社の資源をもっともっと有効活用しようよ!という意図を感じました。このあたりが、地元で根付いている企業への敬意だなあと思います。
長岡には素晴らしい企業がたくさんあって、世界に通用する技術はある。ブランド=技術だった時代にはそれでも良かったけれど、今は違うのだから、と。
ブランドの名前を「どこにつけるか?」という歴史から学ぶ
ブランドの名前がどこにつけられてきたかという歴史を、事例を交えて紹介されていました。
製造者 → +品質の保証 → +流通網 → +顧客層という流れで、名前の置き場が変わっていったブランド。現代での例もわかりやすかったですが、自分が高級ブランドのことをあまり知らないので、()内でもう少し大衆化したものを考えてみました。
製造者につけられた名前:現代では地域ブランド
(わかりやすいところだと「国産」「新潟産」「長岡産」などかな)
製造者+品質の保証につけられた名前:現代では工業化製品
(三条の超高級な工業製品はたぶんこの辺)
製造者+品質の保証+流通網につけられた名前:現代ではユニクロ
(むしろ Amazon ぽいんじゃないかな)
製造者+品質の保証+流通網+顧客層につけられた名前:現代ではルイ・ヴィトン
(常に顧客と一緒に変わっていくという視点が大事)
そうやって顧客層まで名前の置き場が変わってきて、今後、どうなるか。
今までのブランドは「企業が顧客の思考停止を促すため」にあったものが、これからは「顧客が自分の人生の可能性を拡げるため」になりつつあります。(※動画を見るとわかりますが、この表現はちょっと変えてあります)
つまり、お客様を主役にして、お客様を成長させることで、結果的に企業が成長するという流れになりはじめています。
ブランドの「最先端」はどこにあるのか
ブランドは、どういう名前をつけるかではなく、どこに名前をつけるかを問い直そうという話ですね。その「どこ」にも結論が出ています。「お客様が成長する体験」です。
まとめると、
ブランド = お客様の成長(の体験)についた名前
ブランディング = お客様を成長させる体験をデザインすること
となります。
最先端と言っても、「UX」という言葉がすでに広まっているので、それをブランドの視点からわかりやすく説明した感じでしょうか。
どのようにお客様を成長させる体験をデザインするかが、ますます重要になってきます。
ただ、これを実現するためには、時間がない、人がいない、手間が増える、お金がない、など、そびえ立つ壁がたくさんあるので、そのハードルの向こうが想像できないと「いい話だね!(でもうちには関係ない、次のアポどうしようかな)」で終わってしまいます。
このハードルを乗り越えるためには、関係者全員がウォール・マリアの世界に思いを馳せ、新しい世界にいる自分たちの未来像を共有するためのコミュニケーションが必要だと常々思っているので、私も小出さんと同様に、何十回でも何百回でも声に出していきたいと思います。
声に出して読みたい日本語、ブランディングコミュニケーション。日本語じゃないけど。
ただし「成長」にもいろいろある。
どのような成長に対して、どのようなデザインをするのか。
色々な「成長」のカタチがあるので、企業としては、どのような顧客にどのような成長を提供できるかを、よくよく深めていくことが大事ですね。
これがいわゆる「誰に・何を」です。
最近「成長」という言葉にトラウマができた自分としては、「成長」って安易な言葉だな……と、眉をひそめていたのですが、やはりぼんやりした言葉なので、具体化の重要性を再確認しました。
ここから厳しい話になります。
事例には、長岡の企業がひとつもなかったんですよね。小出さんは、「人生の価値」をまっすぐ提供できる長岡の企業がないことに、警鐘を鳴らしていました。
「どんな良い名前(=カタチのデザイン)をつけるか」にとどまっていて、「どこに名前をつけるか(=体験のデザイン)」がないこと。デザインが、付加価値としてでしか活かされていないこと。
こうやって声高に言われているあたり、企業が価値観をひっくり返す(パラダイムシフト)ことができないと、本当に難しいのでしょう。
だんだんと価値の話になってきたので、価値の探索者としてのアンテナ強度がこの辺から上がりました。
マズローの欲求5段階説で「価値」を考える
私は、価値を「機能価値」「感情価値」「市場価値」の3つで考えていましたが、大別して2つの価値があり、更に2つに分けられるという考え方が興味深かったです。
生産(モノ)価値(生産者に起源する価値)
→ 基本価値+付加価値:マナビに価値がある
生活(ヒト)価値(生活者に起源する価値)
→ 関係価値+人生価値:アソビに価値がある
みんな大学のコンセプトに近いのか近づけたのかわかりませんが(笑)、提供側と顧客側に価値観を分けたのは画期的!
そして、有名なマズローの欲求5段階説でそれぞれを分けていたのもオモシロイ。少なくとも私にとってはとてもわかりやすいのですが、マズローさんは5段階説だけではないそうなので、もっと学ぶきっかけになりそうです。
- 生理的欲求:製品の使用価値
- 安全の欲求:製品の付加価値
- 所属と愛の欲求〜承認の欲求:生活の関係価値
- 承認の欲求〜自己実現の欲求:生活の人生価値
「自己実現の欲求 ≒ 生活の人生価値」を提供できるようになるのが、今求められるブランドの在り方なんでしょうね。
今後、「デザイン研究会」を立ち上げるそうなので、積極的に参加したいと思います。(私は夜行性ではないので、そこだけが気になるけれど)
そんな小出さんの著書はこちら。
個人的に、ガバガバブランドの本がオススメです。10年前の本ですが、ブランドの考え方はさほど変わっていないというか、時代がやっと追いついてきた感じ。中古で安く売ってたりするので(笑)、今回の話に興味を持たれた方は、ぜひチェックしてみてください。
「コンセプトダイアグラム」で具現化できる!
ここからは今回のセミナーの内容ではありませんが、私の中でつながったのでご紹介。
「生活の人生価値」を社内で考え、共有するためのコミュニケーションしよう!と意気込んでも、今までと同じようなミーティングでは、声の大きい人だけが空回りしてしまいがちです。
提供側と顧客側の両面を同時に考えつつ、パラダイムシフトしたゴールまでの道のりを見える化するためのコミュニケーションツールとしてオススメなのが、「コンセプトダイアグラム」という手法。
日本語にすると「戦略図」と言えますが、ただのマップではなく、計器のついた羅針盤です。
比較的有名なのがカスタマージャーニーマップですが、自社視点を重要視するコンセプトダイアグラムの方が、考えやすいのではないかと思います。どのみち、柔軟な思考は必要ですけれど。
この写真は、前日に「コンセプトダイアグラム」の提唱者、清水誠さんを新潟に招いてセミナーをしていただいた時のものです。今回のブランディングの話とつながるので、ベストタイミングでした。
デザイン研究会でも使いたいのですが、近々、積極的にモニター企業を募集しようと考えています。ブランディングに限らず、課題解決のステップが明確になって、たくさんの気づきが得られますよ。
「コンセプトダイアグラム」のセミナーレポートは、次回にまとめます。
では、ごめんください。